現在、NHKで朝の連続ドラマ『ばけばけ』が放送されていますね。モデルとなっているのがラフカディオ・ハーン(日本名は小泉八雲)です。小泉八雲は、明治時代に日本へ辿り着き、日本各地に伝わる怪談を独自の感性で響き残すことで、日本の心を世界に伝えようとした人です。中学や高校で少し習った記憶はあるのですが、調べてみると波瀾万丈な人生を生きた魅力ある人ですね。簡単な略歴をまとめました。

彼はギリシャのレフカダ島で母のローザと、その島に赴いたアイルランドの軍人チャールズとの間に生まれます。
一家はアイルランドへ移り住みますが、母ローザはその地になじめず精神を病み、ハーンが4歳の時に単身ギリシャへ戻ります。その後、ハーンは左目の失明、育ての親の破産といった不運が重なり、19歳で単身アメリカへ渡ります。そこで徐々に新聞記者として頭角を現し、40歳の時に日本へ辿り着きました。
日本で家族を得た晩年、ハーンは生き別れた実弟ジェームズとの文通を通じ、母についての真実を知ることとなります。母は精神を病んで故郷に戻った後、息子たちに会いたい一心で、再びアイルランドに戻って懸命に捜し回っていたのです。しかし再会が叶わぬまま、ハーンの名前を呼びながら亡くなったということです。
ハーンは、「母は自分を捨てたのかもしれない」と思っていたのかもしれません。しかし、この話を聞いたとき、そうではなかったのだと気づきます。母と生き別れてからの長い長い年月、母は自分を思い続けてくれていたのだと知りました。

浄土真宗で「時」を考えるとき、よく出てくる言葉があります。『正信偈』の中にある「五劫思惟摂受」という部分です。同弥陀さまは、仏となられる前、法蔵菩薩という修行者でした。その法蔵菩薩が「五劫」というとてつもなく長い間、思惟を重ねて願いを立てられたと説かれます。全てのものを救うための願いというのは生半可なものではない、とんでもない時間を要するものなのだということです。
長い時間がかけられて、私に向けられた思いや願いがあったのだと気づくとき、それまで過ごしてきた人生が、実は深い願いに支えられていたのだと気づかされることかと思います。