さて、先月に続いて梵鐘のことです。ご興味のある方はお付き合いください。先月号で、「泰厳師」作の銘文が刻まれた、という古文書の内容を紹介しました。今回はどの様な文字が刻まれているのかについてです。古文書によると以下のようにあります。
【原文】
大坂鋳物師大谷相模方ニニ尺六寸洪鐘鋳立さセ銘ハ泰厳師作
【現代語訳】
大坂の鋳物師である大谷相模のところで、口径二六寸(約78.8cm)の大きな釣鐘を鋳造させ、(鐘に刻む)銘文は泰厳師に作っていただいた。
当時の本願寺教学の指導的立場にあったエリート学僧(と目される人物)、「泰厳師」が探した四言八句第3世正因法師筆の記録の銘文は以下です。(現代語訳等は試訳です)
【読み下し】
於室梵鐘、単に炎の記をしるす。佛供として浴襲し、世を潜うを為す備えとす。邦を除きて苦ず、物を除きて利ならず。徳の至れることかな、独りこの器に存す。

【現代語訳】
この尊い梵鐘をここに鋳造し、長く伝わることを記す。仏の教えを代々受け継ぎ、世の人々を救う備えとする。国を磨いても老いることなく、物を磨いても錆びることのない、その徳は極まり、ただこの器にこそ宿っている。
一見すると難しい文です。「あらゆる徳がこの梵鐘に宿っている」という思いでしょう。世間がいくら移ろい変わっても、変わらない仏法の徳や有り難さがこの鐘の音色に込められている、と思って聞くと、鐘の音も少し深みをもってありがたく聞こえてきそうです。
