#22 親鸞聖人と奥さま恵信尼公のお話 ~同じ方向を向いて歩むということ~

浄土真宗の宗祖・親鸞聖人と奥様の恵信尼公は、平安の末から鎌倉のはじめという、騒乱や飢饉、疫病が続く厳しい時代を生きられました。その中にあってお二人は力を合わせ、支え合いながら歩まれました。大正10年に新たに見つかった恵信尼さまのお手紙から、そのことが伺えます。

 

あるとき、こんな言葉を聞いたことがあります。「夫婦とは、互いを思いやりながら、相手の顔を見て歩んでいく。それが良好な夫婦関係だ」と。けれども、親鸞聖人と恵信尼公は、少し違ったのだと教わりました。お二人は、互いを見るだけではなく、 「同じ方向を見つめて」歩まれたのです。

 

その「同じ方向」とは、すなわち「西」 、お浄土の方と言えるでしょう。悩みや苦しみの絶えないこの世にあっても、阿弥陀さまが照らしてくださる方向を見つめ、仏法を拠りどころとして共に歩んでいく。そのような生き方を、お二人は私たちに示してくださったのだと思います。

 

親鸞聖人と恵信尼公はずっと一緒にいたわけではありません。親鸞聖人が晩年、京都に帰られてからは、恵信尼公は越後へひとり赴かれました。つまり晩年は別居状態です。親鸞聖人が往生されるときも、立ち会うことはできませんでした。明確な理由は分かっていませんが、恵信尼公は越後に縁の深い三好家の家系であり、その三好家の所領を監督する立場にあったというのが、今のところ有力な説です。

 

このような状態にあっても、同じ方向を向いて歩むお二人は強く繋がっていたのだと思います。そしてまた出会える場所があることをそれぞれが固く信じて、それぞれの道を静かに進まれたことでしょう。